中欧の絵本・原画展(ムーゼの森)
眠い目をこすらせ朝っぱらから、佐久インターで降りて18号を上る。
野暮用で軽井沢に行ったので、帰りがけに絵本の森美術館に寄ってきた。
6300点の絵本を収蔵する1.5km2の敷地内は木に囲まれて、
第1・2展示室、絵本図書館、吉田文庫、絵本のお店とかなり見応えがある。


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まずベルクなる第1展示室で「欧米絵本のあゆみ展」を見る。
「アリス、グリム童話、ムーミン、ピーターラビット」など誰もが知る絵本の原画がたくさん。
「白雪姫」の版画なんてシンプルでとってもいい。ホーンブックもお洒落すぎ。
初版の「ちびくろさんぼ」がおっさんくさくて見るたび笑った。
幼稚園児が館内でなぜかタカ&トシは?と叫んでいたのにも笑った。


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時代が進むと、欧米の絵本黄金期の作品が並ぶ。
「はらぺこあおむし、ミッフィー、ブレーメンの音楽隊」に「ひとまねこざる」。

1950年代後半に入ると広告やグラフィックデザインという分野が絵本制作を取り組むようになり、
わかりやすく大胆な構図が導入されたそうだ。
「あおくんときいろちゃん、ハーメルンの笛吹き」など。
見比べると、"絵"ではなく、"絵本の中の1ページ"に色の役割が変わったことがわかる。
「三匹のやぎとがらがらどん」のセリフ文字を見て、そういえば日本語も明朝体だったなんてことを思い出したり、タイポグラフィを見てても面白い発見を。
(中の様子を1枚だけ公開。撮影禁止なのでよい子は真似しないでネ)


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次に第2のトゥルムでは企画展「中欧の絵本・原画展」を開催。
とっても興味があったので、思わず興奮。チェコ・スロヴァキア・ポーランド・ハンガリーの絵本が沢山。
時代に行われてきたことの背景によって、各々の国での絵本の役割が違うことがよくわかる。
それによって色や表情も大きく変わる。
小さい頃の記憶でも印象に残る色遣いが素敵な「あめとおんなのこ」を描いたクドゥラーチェクがチェコ人だったことも知った。17世紀に絵本誕生の場となった国。益々行きたい欲がまた高まる。
初めて目に入れたリトアニア出身のスタシス・エイドリゲビチュス「クレセント・ムーン」もとても印象的。
暗い水色と闇の世界で月がせっせと豆まき。独特の目が少し恐いのだけど、その内側にある優しさを感じる。
登場キャラにヨハンという名が出てくる絵本や「悪魔の水車」なんてタイトル、
特にスロヴァキアの絵本にはモンスターの話を連想してドキドキ。
欧米にはなかった少し背筋が張る感じと悲しさの中にある、強く暖かいキャラクターに心惹かれた。


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これは、ポーランドのヨゼフ・ヴィルコンの言葉の一部。
- イラストレーションはどのようにして制作されるのか? -
まず人や魚や、鳥、さらには葉っぱや動物は、どのように色彩したら
そのような動き方をするのか、知らなければない。
生きとし生けるもの全てのものは、昆虫のように走ったり、這ったり、
そろそろ歩いたり、泳いだりする。
たいていの人はここまでならたどり着けるが、
この先に行けるのは、1日中彩色の仕事に没頭できる少数の人だ。
こうした仕事があって初めて、鳥は歌い、悲しみや喜び恐れや勇気を表現することができる。
眠りや沈黙、果実の匂いや味覚を表現するためには、さらに先に進まなければならない。
あるとき私が「どうやったら絵がうまくなれるの?」と聞いたとき、
両親は揃ってヨゼフが言っていることと同じことを教えてくれた。
うまく作ろう、なんて思わずに「描くものをよく見なさい」と。
私はまだ一番始めにしなければならない"知ること"の段階にいるのだ。


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近年、"なんとなくかっこいいもの"に若者の評価が集まりすぎていると思う。
テクニックや発想や感覚には感動しても、作品自体に感動できないことが多い。
自分についても例外でなく、それを疑問視しながらも、憧れたり羨んだり。
作っているとき、"作っているもの"ではなく"作られるもの"を意識しすぎている、ことに気づく。

多分それをやっている限り"本物"に近づくことは永遠にできない。
わかっていながら、日常の狭く同人の密度が高い世界でのたうち回っていると余裕をなくしてしまう。
私の仕事はクリエイターであってアーティストではないから、相手あっての物作りであり流行りを追う事も必要だ。だから大衆に好まれるものを意識することは間違いではないのだけれど。


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ただ、好きなことくらいは・・・広い海を見ているときのように、大きな森を見ているときのように、
常に"自分という存在のちっぽけさ"を思い出して、余裕を持った取り組みをしたい、と思った。
目の前にある対象物をしっかりと見るために。
"人がどう見るか”でなく、"自分がどう見えているか"に集中するために。
今はまだコントロール下手だけど、"物"と"物に写る自分"に目を逸らさない強さを持てるようになりたい。


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そんなことも思いつつ、純粋に子供の頃に気持ちに戻りつつ。結構な見応えに少し疲れたけど、
とてもいい機会でした。ブラティスラヴァ世界絵本原画展にもいつか行ってみたいです。


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エルツおもちゃ博物館の方はお土産見物のみ。高くて買わなかったけどパイプ人形が可愛かった。


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長野をなめてた!と思うくらい寒い。まるでまだ冬のまま、木々も全く芽いていない中、
博物館とカフェを繋ぐ小道のシートに鳥の巣を見つけた弟。和む光景。(ちなみにこのとき都心は桜が満開)


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愛すべき「どろんこハリー」と、渋すぎるスナフキンが表紙の「ムーミン谷の11月」の英語版、
上に載せた「いやといったピエロ、あかずきんちゃん」などのポストカードをお土産に。

企画展もまだまだ長くやってます。お子様と一緒の方も、子供心に戻りたい方にもおすすめ。

***** 「中欧の絵本・原画展」=伝統の絵本芸術から生まれた幻想世界= *****
会期:2007年3月1日(木)-7月2日(月) 
場所:軽井沢 絵本の森美術館
http://www.museen.org/
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by qp-dw | 2007-03-31 00:00 | 美術
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